作成2000.4.24.更新2005.5.10.
さて、大中小と全ての日本将棋の歴史を解説したつもりですが、ここではそれ以外の将棋を紹介していきます。
それ以外としたのは、実際にゲームとして遊ばれたとは言いがたく、実際には装飾品として特別に作らされたものだろうと考えられているからです(軍人将棋は除きます)。
また、これらの大型将棋に関する紹介文献はあっても、実際に遊んだとする記述は見当たらず、16世紀末に当時の駒職人が残した製造記録にも、ごく少数しか作られておらず、大体が貴族や上流階級からの発注であったようです。
では紹介していきます。
1.大大将棋
縦横17行、駒数192枚。
なお、犬は他の将棋でいう仲人と同じです。将棋によって名前が変わるようです。
盲虎の盲の文字も、ここでは古い方の猛を当てています。いつからか目が見えなくなってしまったんでしょうね? ただ、駒自体の動きは違うだろうと思いますのであしからず。
(多少の訂正が加わりました。2000.6.21.)
2.摩訶大大将棋
縦横19行、
駒数192枚。
王将→自在天王
提婆→教王、無明→法性、仲人→奔人、石将→奔石、盲虎→奔虎、鉄将→奔鉄、銅将→奔銅、銀将→奔銀、金将→奔金、猛豹→奔豹、猫刄→奔猫、悪狼→奔狼、老鼠→蝙蝠、古猿→山母、盲熊→奔熊、臥龍→奔龍、蟠蛇→奔蛇、土将→奔土、准鶏→仙鶏、瓦将→奔瓦
摩訶不思議な「まか」が大大将棋に冠しました。でも大大将棋よりも幾分見やすくなっているようです。
(ここまできたらなんでも同じでしょうが)^^;
ここでは盲虎に戻っていますね。猛豹以外が盲になっています。ただ、当時の数少ない資料からなのでここらへんは編纂した人のいいかげんさもあっただろうと思います。
一応、成り駒も分かる限り解説しましたが、ほとんどが「奔」を付けるだけのいいかげんさ(*_*)、
ただ、その中でもこの摩訶大大将棋にきて、王将までが成る事となります! その名も「自在天王」!
えげつなくどこにでも自在に動き回るそうです。「盤面無不至」とのことです。
(駒名に訂正が加わりました。6.21.)
3.泰将棋(無上大将棋)
泰将棋…もとは無上大将棋(と書いてむじょうたいしょうぎと呼ぶ)と呼ばれていたものが、大将棋(だいしょうぎ)との混同があり、同じ韻で、「泰」の字を代わりに当ててよぶ事にしたのが泰将棋の所以とのことです。このことについて、六種之図式にはこう書かれています。
「或る人問う、何ぞみだりに改むるや、答う、象棋を将戯に作る事久し、泰将棋何の子細あらん。」と。
とりあえず、最大の日本将棋と紹介しておきます。(というのも、大局将棋というえげつないのがまだあるからだそうです。けど、ここでは紹介しきれないので別の機会にいたします。)
縦横25行、駒数354枚です。
・5月の更新まで、全ての駒の資料は『象戯図式』をもとに作成いたしましたが、今回、新たに『象棋六種之図式』も参考にすることとなりました。
そこで、これまで夜刄なのか夜叉(やしゃ)なのか不明だった駒について、やはり意味のわかる(仏教用語です)夜叉の方が正しく、逆に猫叉については、猫刄(みょうじん)が正しいものと判断いたしました。
これで、基本の六種将棋を紹介した事になります。ですが、これ以外にもう一つ、天竺の名を冠する将棋が存在したようなので紹介します。
4.天竺大将棋
縦横16行、駒数156枚
成り駒の紹介
酔象→太子、奔王→奔鷲、飛将→大将、角将→副将、
飛鷲→飛将、角鷹→角将、龍王→飛鷲、龍馬→角鷹、
獅子→獅鷲、鳳凰→奔王、麒麟→獅子、飛龍→金将、
飛車→龍王、角行→龍馬、竪行→飛牛、横行→奔猪、
水牛→火鬼、車兵→四天王、竪兵→車兵、横兵→水牛、
金将→飛車、銀将→竪行、銅将→横行、鉄将→竪行、
猛豹→角行、盲虎→飛鹿、反車→鯨鯢、桂馬→横兵、
香車→白駒、歩兵→金将、
大将棋の変形型と思われる天竺大将棋です。駒の成り方ですが、究極は金将から大将への5段階となっていて(実際は1度しか成れません)、多分に軍隊要素が強い将棋になっています。
また、中将棋以外で偶数盤の将棋もこれだけとなっていて、異色の将棋です。
・もっと特殊な古典将棋です。
5.禽将棋(とりしょうぎ)
ローカルな将棋と紹介していましたが、調べてみると、9世名人大橋宗英の考案と伝えられています。
縦横7行の盤のようです。(飛び出している燕が正しいかどうか不明です。)
鷹は能鷹に、燕は隼に成る事が出来ます。
以上が古典将棋の全てです。まだ私の知らない将棋があるかもしれませんが、ご存知でしたらお知らせください。 そして、もう一つ、第2次世界大戦中にどこからともなく発生し、終戦と同時に消えていったといううわさの軍人将棋が残っています。 こちらはルールも詳細に知られており、別に紹介したいと思います。
更新個所…各種将棋の駒の名前を改めました。泰将棋に関して、新たに説明を加えました。
『雑芸叢書』収録の『象棋六種之図式』を新たに参考文献とし、一部改めました。