駒落ち手合いについて

2003.5.15.作成

 中将棋の対局には現代将棋同様、駒落ちの手合いの制度が存在します。ただ、中将棋そのものの対局が少ない現状では駒落ちに関する知識はほぼ失われつつあります。ここでは『中将棋全集』に基づく駒落ち手合いを紹介し、同時に日本中将棋連盟の活動の中で新たに考えてみた手合いも併せて紹介して行きます。

T.駒落ちの種類<中将棋全集>

1.平手
2.小駒一枚落ち
3.横行落ち
4.竪行落ち
5.獅子二
6.獅子三
7.獅子三奔王落ち
8.獅子三奔龍落ち
9.獅子三奔龍飛落ち
10.獅子三奔龍飛竪落ち
11.獅子三奔龍飛竪横落ち(獅子三片)

U.各手合いの解説

2.小駒一枚落ち

 上手側が、猛豹・銅将・銀将・金将の中から一枚を落とす手合い。(もちろん上手先手)

3.横行落ち

 上手が横行を一枚落とす。<a.これ以降、大駒(走り駒と獅子)一枚につき、二手を上手が対局前に移動するという規則が加わる。詳細は後で>

4.竪行落ち

 上手が竪行を一枚落とす。<先手は二手分移動可能>

5.獅子二

 下手の麒麟を最初から成らして、獅子を二枚の状態にする。<先手は二手分移動可能>

6.獅子三

 獅子二の手合いに加えて、上手の麒麟と下手の鳳凰を取り替え、麒麟を獅子に変えて下手が獅子を三枚にする。<先手は4手分の移動が可能>

7.獅子三奔王落ち

 獅子三の手合いに加えて、上手の奔王を落とす。<先手は6手分の移動が可能>

8.獅子三奔龍落ち

 獅子三の手合いに加えて、上手の奔王・右龍王を落とす。<先手は8手分の移動が可能>

9.獅子三奔龍飛落ち

 獅子三の手合いに加えて、上手の奔王・右龍王、飛車を落とす。<b.これ以降の手合いでは、先手側が対局前に自軍の駒組みを自由に組み替える事が出来る。詳細は後で>

10.獅子三奔龍飛竪落ち

 獅子三枚に加えて、上手の右側の奔王から竪行までを落とす。

11.獅子三片駒

 獅子三に加え、上手の右側の奔王から横行までを全て落とす。

 

V.図面解説

 図1.獅子三の手合い

 上手側の麒麟の位置に、下手側の鳳凰が入り、下手の鳳凰の位置に成り獅子が入ります(黄色のマス)。

 また、水色のマスは駒落ちの時に落とされる側の駒です。奔王のある6列目から1列目の駒が対象となります。これは駒落ち手合いの原則です。

 さて、先述aについて詳細しますと、獅子三の場合、相手の獅子が二枚多い=四手分。(走り駒が一枚落ちるにつき二手分を)上手が対局前にその手数の分だけ自軍の内部で駒を動かすことが出来るのです。この図ではつまり四手動かせますが、自軍の中だけなので、十一段目の四マスに指し動かすことしか出来ません。なので獅子三以上の駒落ちになってもあまり意味がありません。

 

図2.上手が動かせる範囲

 先述b.についての詳細となりますが、9.獅子三奔龍飛落ちから11.獅子三片駒での手合いに限り、上手は自軍の中で駒組みをすることが可能です。

 図の赤いマスは、動かすことが禁止されている駒です。中将棋では龍馬・角行は落とすことが出来ない駒とされており、駒組みでの移動も許されません。    また、歩兵・仲人は自軍の先端なので動かすことが出来ず、獅子と鳳凰も初期配置からの移動が出来ません。

 黄色のマスについては、ルール上禁止されてはいないようですが、実際には動かされておらず、詳細が不明です。

 ですので、自軍の赤マスと黄マスを除いたマスに、残りの駒を自由に配置出来ます。それが獅子三枚という大きすぎるハンデを穴埋めするための上手の特権です。

 つぎに、a.の詳細の続きとなりますが、8.獅子三奔龍落ちから6.獅子二までの手合いでのハンデの穴埋めとして大駒一枚につき二手動かすことが出来ますが、ここでは赤いマスの駒に加えて、ピンクのマス(盲虎・王将・酔象)の駒も動かすことが禁止されます。

 結局、奔王・龍王・飛車・竪行・(横行)・金将・銀将・銅将・猛豹、の駒を対象に動かすことが出来るというわけです。かなり動きは限られるのが実際です。

 

W.日本中将棋連盟独自の手合い

 「二枚王」手合い…下手の酔象を太子に変え、王将二枚の状態で対局を開始する手合いです。

これは、二枚獅子などで序盤の駒の定跡が平手とは大きく異なってしまう、という問題点に対して考えたもので、序盤の駒組みは基本的に平手と同じ動きが出来るというメリット(序盤戦の勉強になる)があり、なおかつ王手大駒どりをかけられても大駒を逃げさせることが可能になるという点で、獅子二枚と同じくらいのハンデにもなります。特に初心者から駒組みを勉強して行こうとする中級者に有効な手合いではないかと考えています。

 

X.注意点

 現在、日本中将棋連盟では駒落ちの手合いを実力差に応じて公式の対局に導入してはどうかという検討をはじめているところであり、まだ現時点ではこれらの対局を公式記録には加えておりません。

 2003年の夏を目処に、実力差相応の手合いを検討し、段級位規定の改正も含めた導入を目指しています。